地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方(その5)   

NPO法人岡崎まち育てセンター・ りたが、岡崎市T学区をモデル地区として、地域の防犯まちづくりに地域密着型の中間支援組織(支援者)として関わり、防犯まちづくりを進めてきた経緯について6ページにわたり紹介します。その5では、T学区の「防犯活動」が「まちづくり」へと広がった後の取り組み(行動計画の実施)についてと、地域密着型の中間支援組織の支援方法について分析しました。


出典:三矢勝司・天野裕・吉村輝彦「地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方 その5:岡崎市T学区における見守り活動の深化と波及」日本建築学会学術講演梗概集. F-1,  2012


Tっ子あん&あんクラブの概要

Tっ子あん&あんクラブ(以下、あんあんクラブ)の前身は、2005年に発足したT学区の自主防犯パトロール隊です。登下校時の児童の見守り活動を強化することをきっかけに2009年に7回の設立準備会を経て、あんあんクラブへと組織が再編されました。

様々な地域組織と協議を重ねた結果、PTAが見守れない夕方に老人会が見守るなど、相互連携が図られています。現在は、PTA、学校教員、老人会を中心とするボランティア529名により活動が支えられています。


防犯活動からまちづくりへ

NPO法人りたが中間支援組織として働きかけた結果、多様な組織を巻き込んで生まれたあんあんクラブの活動は、以下のように深化し、波及していきました。


町内会活動への波及

下図1は2011年度の取組みと各組織の関係を示しています。「あんあんクラブ人口委員会(2011年2月)」や「住み良いまちづくり会議(2011年9月)」での審議結果を受け、迅速に活動を始めたのは町内会(岡崎では総代会)でした。

町内会は、あんあんクラブ活動の広がりには地域団体との連携が必要であると認識し、「学区福祉委員会の担当者」を設置しました。また、あんあんクラブ実行委員会で提示された4つのテーマ(下表1)の一つ「感謝でつながるコミュニティづくり(A4)を実践するため、地域住民と小中学生の交流を意図した「地域総合防災訓練」の企画を行いました(残念ながら台風のために中止になっていまいました)。

同様に「野鳥の森再生事業(A2)」を実現するため、公園愛護会は学区福祉委員会が主催する「子どもフェスティバル」実施会場を野鳥の森とする計画の調整を進めました(こちらも実現には至りませんでしたが、実施に向けて検討がなされたことは評価できます)。

このように、あんあんクラブの活動が町内会や公園愛護会の地域活動へと広がりを見せました。

表1:あんあんクラブ実行委員会で提示された4つのテーマ

総合学習を含む見守り活動の展開(A1) 野鳥の森再生事業(A2)
福祉活動と防犯活動の融合(A3) 感謝でつながるコミュニティづくり(A4)


防犯活動の深化

あんあんクラブの設立時から「活動実態がよく分からない」ことが課題としてあげられていたため、NPO法人りたが主導して「見守り活動者向けアンケート」を行いました。

その結果、「活動の時間帯は【下校時】が最も多く、一日平均約40名が見守り活動をしている」ことが確認されました。あんあんクラブ役員らは、予想以上に多くの活動者がいることに励みを得ました。一方で「防犯グッズを身につけていない人が多い」という課題を確認しました。

その後、アンケートの結果を小学校と町内会を通じて周知し、新規活動者の募集と活動啓発に役立て、組織の安定化が進みました(2012年3月)

また、「野鳥の森にホームレスに見える人がいることで、子どもたちが安心して遊べない」という課題に対し、NPO法人りたが岡崎市に対して情報収集を行い、住み良いまちづくり会議で情報提供しました。その結果、有志と町内会役員を中心とした活動が始まり、問題が解決しました。これは「総合学習を含む見守り活動の展開(A1)」に該当します。


地域と学校が連携した公園愛護活動の胎動

野鳥の森のホームレス問題の克服を経て、地域住民、小学校の関係者が互いに協力して野鳥の森を守り育む公園愛護活動への機運が高まりました。

活動の実施主体としては「学区福祉委員会(あんあんクラブの母体組織)の地域ボランティア部会」と「野鳥の森が地区内にある町内会」が想定されており、T小学校も参加者の呼びかけに協力する予定です(2012年5月頃に清掃活動から着手予定)。これは「福祉活動と防犯活動の融合(A3)」に該当します。


地域密着型支援組織にみる6つの支援活動

以上、一連の取組みに対して、NPO法人りたが行った「中間支援活動」からは、以下の6点の支援活動を抽出することができました。

1.活動実施の進行確認(リマインド)

地域活動(特に市民発意の活動)は、アイディアが膨らんでも、その後の確認作業がなければ実際には行われないことがあります。そこで、NPO法人りたは「子どもフェスティバルを野鳥の森で開催」とする計画の実現に向けて、関係者に働きかけや確認を行いました。結果的に実現には至らなかったものの、支援者が進行確認(いつ、どこで、何をするか)をすることで、計画の実現可能性を高めることができました。


2.活動実態の可視化

あんあんクラブ役員らは見守り活動の登録者数は増えても、実際の活動者が増えていないのでは?と不安を抱えていました。そこでNPO法人りたがアンケートを企画実施した結果、役員らの認識が変わり、改善活動がおきました。このように、支援者には調査や分析活動が必要です。


3.役割分担の場づくりへの下準備

「あんあんクラブ実行委員会」や「住みよいまちづくり会議」の企画段階から、あんあんクラブ役員らに参加してもらい、当日の進行の一部や呼びかけはあんあんクラブ役員が担っています。これにより、当日は参加者(地域住民や学校関係者)が主体となり、「自分たちに何ができるか」という観点で議論が進行しました。あわせて、NPO法人りたは住民が主体的に役割分担をできるよう、予め必要な情報収集を行いました。このように支援者には有効な役割分担へと導く下準備(主催者団体役員の企画段階からの巻き込み、必要な情報収集)活動が必要です。


4.役割分担の促進

過去の論文その2その4でも指摘したように、多様な主体(地域住民、学校関係者)が集まる議論の場において、参加者に分かりやすく情報を伝え、相互の信頼関係や主体性を引き出すファシリテーションの技術による支援活動は欠かせません。


5.新しいキーパーソンとの情報共有

T学区のケースでは、2011年4月からT小学校の教頭が代わり、情報共有や信頼関係づくりはゼロから始まりました。お互い様子見の状態だった段階から、年度末の頃には教頭の方から「アンケート結果を父兄に向けて配布したい」「野鳥の森活動の呼びかけには協力したい」と提案を得られるまでになりました。これは、NPO法人りたが新教頭との情報共有を丁寧に行ったからです。このように、支援者には情報共有活動が必要です。


6.当事者同士の関係構築

NPO法人りたは、あんあんクラブ役員に会いにいく際は学校関係者も誘い、学校関係者にに会いに行く際はあんあんクラブ役員を誘うというように、なるべく両者が同席いただけるように調整しました。これによって当事者同士の信頼関係や相互に提案し合う関係づくりに寄与することができました。このように、支援者には当事者同士の関係構築活動が必要です。


ヒントとガイド

  • はじめに
  • 子どもの成長と安全
  • 地域の問題をつかむ
  • 組織づくり・運営
  • 計画づくり
  • 防犯からまちづくりへ
  • 活動をふくらませる
  • 担い手をつなげる
  • 情報の共有
  • 取組みの評価と改善

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