都市公園へのネットワーク型街頭防犯カメラの設置例と市民の態度   

 

千葉県市川市では、2008年から多くのCCTV(ネットワーク型街頭防犯カメラ)を公園や道路などの公共空間に設置する施策を行っています。本論 は、市川市のCCTVの設置運用の具体的方法と、市民への質問紙調査の結果をもとにしたCCTV設置運用の評価から、今後の公園へのCCTV設置運用に資 する知見を導き出すことを目的としています。

出典:雨宮護・島田 貴仁・高木 大資「千葉県市川市における都市公園へのネットワーク型街頭防犯カメラの設置例と市民の態度」ランドスケープ研究 74(5), 2011, pp783-788

研究の方法

市川市へのインタビュー調査

公園へのCCTV設置運用をしている市川市役所危機管理部(調査時)に、「設置に至る経緯」「設置の過程」「運用の実態」についてインタビューを行いました。また、市川市議会の議事録、公園の所在地や面積等のデータも合わせて入手しました(2009年10月〜2010年8月)。


質問紙調査

市内の90地区に居住する79歳以下の成人から無作為に抽出された4,073名を対象として質問紙調査を行いました。質問紙は全地区共通の「共通票」と地区ごとに異なる「地域票」の2種類があります。詳しくは表-1の通りです。地域票は「あなたのお住まいの近くにある○○公園についてお尋ねします」 という形で、公園を特定して回答してもらいました。

質問紙調査は2010年2月に行いました。市川市によるCCTVカメラの設置は2008年から2010年の3年間に150台(各年50台)の CCTVを設置する計画ですから、質問紙の配布時には、回答する公園のタイプは「既に公園にCCTVカメラが設置されている」「設置予定がある」「設置なし」の3つに分かれます。そこで、この3群間の回答の差は、CCTVの設置の状態(既設、予定、なし)の3つの状態に起因するという前提のもとで分析を行いました。

結果1:CCTVの設置と運用

CCTVを設置する場所の選定方法

  • CCTVの設置にあたり、まずは「一自治会一箇所」の方針で市内の全自治会から設置希望をアンケートで募った。
  • これに警察や市が設置を希望する場所を加え設置場所の検討を行った。
  • 検討には防犯まちづくり推進協議会(市の防犯に関する施策について意見を述べることを目的として2007年に設置。自治会、商工会、防犯協会、事業者、PTA、警察、市等20団体から構成される)の意見も踏まえつつ、現地調査を行い決定した。
  • 現地調査の際には、公共の場所であること、取り付けに必要な電源や空間があること、周辺の犯罪発生状況、既存の防犯カメラと隣接していないことを中心に設置可否が確認された。


CCTVの運用方法

  1. 設置の目的
  • 犯罪の抑止
  • 市民の犯罪不安の軽減
  • 災害時等の非常時における迅速な情報の収集


  1. CCTVの型式
  • 道路に設置されたのは撮影方向が外見からわかる「箱形」。箱形は道路だけを撮影していることが明示できるため、プライバシーへの配慮から選択。
  • 公園に設置されたのは外見から撮影方向がわからない「ドーム型」。面的な施設である公園は、撮影方向が分かると防犯効果が薄れるためドーム型が適している。


  1. 通常の防犯カメラ(スタンドアロン型)との違い
  • スタンドアロン型はカメラの設置場所にデータが記録されるが、CCTVは撮影データがネットワー クを通じて伝送され、遠隔地にあるサーバで一元管理されている。
  • スタンドアロン型は、撮影された画像の収集が効率的に行えない、データの保守性に問題 がある、故障時の発見が遅くなるなどのデメリットがある。


  1. 費用
  • 3年間に設置される予定の150台のCCTVに対し、総額で1億5,410万円の予算見込み。
  • 実績ベースでは初期費用として 2008年が約1,880万円、2009年が約2,220万円、運用費用として2008年が約840万円、2009年が約2,680万円。
  • 初期費用→システム構築(増設)委託・設置柱新設(補強)工事・通信回線初期費用・路面シールの貼り付けなど。
  • 運用費用→通信回線使用料・機器賃借料・サーバーハウジング料・システム運用/保守委託など。


  1. CCTVでの撮影方法と画像データの取り扱い
  • CCTVの運用は、2005年に定められた「市川市防犯カメラの設置及び利用に関する基準」に基づいて行われる。
  • 撮影された画像の取り扱いは「個人情報保護条例」および「防犯カメラの適正な設置及び利用に関する条例」に基づいて行われる。
  • CCTVは24時間稼働し、画角の範囲内を撮影。撮影された画像はインターネットを経由しない独自回線によって遠隔地にあるサーバに伝送された後、集約されてハードディスクへ保存。
  • データは厳重にアクセスが制限された一室に保存。データの管理運営は定められた職員だけが市の庁内LANを通じて行う。
  • 撮影された画像の開示に対しては、2010年8月までに、警察から計58件の照会(道路・神社に対するものも含む)があり、その中には実際にひったくり犯の検挙に役立った実績あり。市民からの開示請求や苦情の実績はなし。




結果2:CCTVを設置すべきとして選定された公園の妥当性

市川市でCCTVが設置された公園の特徴

2010年度9月現在において市内の公園に設置されたCCTVカメラの数は38カ所(2008年19カ所、2009年19カ所)です。CCTVが設置された38箇所の公園の面積規模とCCTVの設置率を示したのが下図-1です。

  • 箇所数でみると1500㎡〜2,500㎡程度の中規模の公園への設置が多く、市内の全公園との相対比でもおおむね中規模の公園での設置率が高い
  • 公園の種別では、箇所数ベースでは街区公園が31カ所と最多。設置率は近隣公園(27.3%、11箇所中3箇所設置)、地区公園(66.7%、3箇所中2箇所設置)が高い(このほか、都市緑地36箇所中2箇所に設置)。

下表はCCTVが設置された公園が存在する町丁目の人口密度と土地利用を市内全域と比較したものです。

  • 人口密度、土地利用ともに両者に大きな違いは見られない。
  • つまり、CCTVは市内の一般的な立地環境にある公園に設置されているといえる。


下表-3は、地域住民による管理団体の有無を示したものです。

表-3.CCTV設置と管理団体の有無の関係


花壇づくり団体あり 清掃団体あり 花壇づくり団体なし 清掃団体なし
CCTV設置公園数 10 18 28 20
未設置公園数 32 105 308 235
公園合計 42 123 336 255
CCTV設置率 23.8% 14.6% 8.3% 7.8%
  • 公園の管理上の特徴を見ると、住民による花壇づくり団体や清掃団体があり、住民による管理活動がされている公園の方がCCTVの設置率が高い。

以上から、CCTVが設置された公園は、繁華街に立地する公園や大規模な公園ではなく、市民が日常的に多く活動する、ごく一般的な公園であることがうかがえます。


CCTV設置予定の公園の犯罪不安

下図-2は、地域票から得られた公園の犯罪不安に関する評価です。これからCCTVの設置が予定されている公園(予定公園評価群)と設置の予定はない公園(予定なし公園評価群)を比較すると、設置の予定なしの公園の方が平均得点が高い(評価が悪い)傾向が見られます。


設置公園の選択方法への提案

CCTVの設置場所の選定は、自治会の意見が第一の根拠として選定され、市も設置時に説明会を開催するなど民主性を確保する手続きがとられたため、市民にとってごく身近な公園に多くのCCTVが設置されることになりました。これが市川市のCCTV設置方法の特徴的な点です。

しかし、自治会によって選定された公園は、市民の不安が高い公園とは必ずしも重なっていないことから、目的の一つである市民の不安の軽減に資するという点からは必ずしも十分ではない可能性があります。

自治会によって選定された公園は「自治会が活発に活動する公園」であることが推測され、そうした公園は必ずしも市民の不安が高い公園とは重なるとは限らないのです。この欠点を補うためには、地元小中学校のPTAや公園を管理する市民団体・NPO等、公園の利用者と想定される人にも設置希望を募ったり、あらかじめ市民が不安を感じる公園を質問紙調査によって把握するなど、自治会を経由するルート以外にも市民が不安に思う公園を把握することが有効だと思われます。

しかし、CCTVの設置は、公園への不法投棄等への対策としてなされる場合もあるため、市民の不安の軽減だけを目的としたものではありません。したがって、自治会による設置箇所選定という方法を一概に否定するものではありません。


結果3:CCTV設置に関する広報の評価

CCTV設置に関する広報

  • 住民のプライバシーを考慮し、CCTVが設置されることになった地区の住民には、設置前のタイミングで説明会が行われた(説明会への参加は自由、市の広報誌にて周知)。
  • CCTV設置箇所には、壁面と路面にCCTVが設置されている旨を表示したステッカーを貼付けた。
  • Web上でCCTVの具体的な設置箇所を表示した(設置後広報)。これは、CCTV設置を市民に知らせることにより、プライバシーに配慮するとともに、犯罪不安を軽減することを狙いとしている。
  • 市民は、市に対してCCTV設置への苦情を申し立てることができるが、市長は、毎年1回以上、苦情の件数を市民に対して公表する。

CCTV設置前の広報の効果

  • 地域票で示された公園にCCTVが設置される予定であることを知っている人は5.2%(524人中27人が認知)と低く、最大の公園で18.2%(22人中4人が認知)、最小の公園で0%(48人中0人が認知)だった。
  • CCTVが設置される前に市民が知ることのできる機会は、市開催の説明会と、各自治会が任意で行う回覧板等をとおした周知に限られ、こうした機会は認知率の向上にはあまり寄与していないことが分かる。
  • 下図-3をみると、地域活動に積極的に取り組むグループの方がCCTV設置を認知している割合が高いことが分かる。つまりCCTVを知る人は、自治会との関係が強く、地域での活動に特に積極的に参加する層に限られる。

CCTV設置後の広報の評価

  • 地域票で示された公園にCCTVが設置されていると知っている人は全体で30%程度であった。
  • 公園別に見ると、知っている人は13.0%〜52.9%とばらつきがあった。
  • CCTVが設置されていることを知ったきかっけは下表-4のとおり、カメラを直接見たという回答が多く、設置後の広報が功を奏したというよりは、市民が日常生活の中で設置されたCCTVを直接目にしたことに起因すると思われる。
  • CCTVの設置を知っている人は、やはり地域での活動に積極的に参加する層が多かった(図-4)。

表-4.CCTVの設置を認知したきっかけ

カメラを直接見た 47.4%
回覧板 22.2%
路上のマーク 25.7%
インターネット 1.8%


CCTVの認知の効果

  1. 犯罪不安の差(図-5)
  • CCTVが設置されていると知っている人の犯罪不安は、知らない人に比べて低い傾向にあった。
  • 年齢や性別による差異はない


  1. その他の効果(図-6)
  • 安心感の向上、イメージの向上といった認知面で、肯定的な変化が生まれた。
  • 迷惑行為の減少や利用者の増加といった利用面での肯定的変化は少なかった。


CCTVの周知に関する提案

CCTVの設置が、公園のイメージや安心感の向上に寄与するためには、CCTVがあることが認知されていることが必要です。しかし、現行の広報では、地域で活発に活動する一部の住民層にしか届いていませんでした。

今後、他地域でも同様の取り組みを行う際には、自治会以外の主体にもCCTVを設置する過程に関与できる道をつくること、設置予定公園の住民へのチラシ等による情報提供や、自治会が活動していない場所への広報を重点的に行うことが求められます。市川市の場合、設置段階では防犯まちづくり推進協議会が関わっており、広報の段階でもこうした主体を活用することも有効な手段といえます。


今後の課題

本研究は、市民の態度を視点としてCCTVの評価を行いました。しかしCCTVの評価は、犯罪抑止や操作への貢献、費用便益などを含め、多角的な視点からなされるべきです。また、CCTV設置によるプライバシーや自由の侵害等の弊害に焦点を当てた研究も必要です。これらを踏まえた、より多方面からのCCTVの効果検証を今後の課題とします。

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