地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方(その3)   

NPO法人岡崎まち育てセンター・りたが、岡崎市T学区をモデル地区として、地域の防犯まちづくりに地域密着型の中間支援組織(支援者)として関わ り、防犯まちづくりを進めてきた経緯について6ページにわたり紹介します。その3では、見守り活動組織が発足した後、まちづくりへと広がっていったプロセ スをPDCAサイクルの視点から整理します。


出典:吉村輝彦・三矢勝司・天野裕「地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方 その3:岡崎市T学区における見守り活動組織発足後のまちづくりへの広がり」日本建築学会学術講演梗概集. F-1,  2011


Tっ子あん&あんクラブとは

防犯まちづくり組織「Tっ子あん&あんクラブ(以下、あんあんクラブ)」は、前稿(その2)で紹介した防犯まちづくりの初動期プロセスを経て再編さ れた新組織です。PTAが子どもを見守れない夕方に老人会が見守るなど、相互連携をとっていることは、多様な地域組織と協議を重ねた効果といえます。 H23年現在では、PTA、学校教員、老人会等を中心とするボランティア182名によって活動が支えられています。



包括的なビジョン(V)の重要性

上図1は、T学区の防犯まちづくりの取り組みを、PDCAサイクルに当てはめて整理したものです。PDCAサイクルはP=計画(Plan)→D=活動の実行(Do)→C=活動の評価(Check)→A=改善(Act)の流れをもつマネジメントシステムです。しかし、T学区の事例ではPDCAには含まれない防犯まちづくりのビジョン(V1)を一番始めに協議し、策定しました。そのビジョンとは『「このまちに住んでて本当によかった」と思えるまちづくりの実現』という包括的なものでした。


そしてビジョン策定後、「登下校時の児童の見守り活動」(D1)が実行されました。登下校時の見守り活動はT地区の防犯まちづくり活動の基幹となります。


一方、組織の設立準備会の中で、T小学校教頭から「子どもが遊ばなくなった野鳥の森をどうにかしたい」という問題提起が出されました。

この問題提起に対して、あんあんクラブで対応するのではなく、野鳥の森関連プロジェクトとしてT小学校とNPO法人りたが独自に活動をすることになりました。総合学習の一環として、6年生による野鳥の森PRビデオづくりと、4年生による紙芝居づくりが行われました(D2)


さらに、「学校と地域をつなぐ」NPOアスクネットからの要請で、T学区内にあるH高校の総合学習をNPO法人りたが取り組む機会が生まれ、その中で「高校生が出来る野鳥の森の改善提案」をテーマにした調査学習が行われました(D3)


このように、基幹活動であるD1に加え、T小学校によるD2の活動やH高校によるD3の活動を行うことができたのは、防犯まちづくりのビジョン(V1)が包括的な概念として制定されており、D2D3を実施することがV1の達成のために寄与しうると判断されたためです。つまり、包括的なビジョンを設定すると、活動に広がりが生まれやすいのです。


多様な活動を踏まえた地域資源の総合診断

D1、D2の経験を、あんあんクラブ役員と共有することで、防犯活動(見守り活動)だけでなく「野鳥の森事業をやっていこう!」という意識が高まりました。

そこで、あんあんクラブ役員とNPO法人りたは、「2011年度活動を考える方針検討会議」を開催し、これまでの活動や残された課題、既存の地域活動や新たな提案などの地域資源を総合的に診断しました(C1)

この会議では、「登下校時の児童の見守り活動」の担い手を拡充するという課題や、「野鳥の森事業」「福祉活動と防犯活動の融合」「感謝の会の開催」といった活動の広がりが構想されました。

ここから、活動やその担い手の多様性は防犯まちづくりを支える源泉であり、それら地域の課題と資源を統合的に話し合う(診断する(C))ことで、新たな活動や担い手をイメージすることが可能となることが分かります。


地域資源の統合的診断から新たな活動・担い手づくり

C1にて、「新しい取り組みを実現するためには、現状のあんあんクラブの枠組みを超えて、学区ぐるみの安全安心まちづくりを語り合う場の必要性がある」と判断されました。

そこで、従来のメンバー(あんあんクラブ担当者、PTA、小学校、老人会、子ども会)に加えて、町内会、あんあんクラブ担当以外の学区福祉委員、交通指導員にも声をかけ、「あんあんクラブ実行委員会」が開催されました。

この場では、総合診断(C1)で認識された4つのテーマ「総合学習を含む見守り活動への展開(A1)、「野鳥の森再生事業(A2)」「福祉活動と防犯活動の融合(A3)」「感謝でつながるコミュニティづくり(A4)」ごとに活動イメージの調整と具体化が行われると同時に、組織を超えた担い手のつながりが生まれ、活動と担い手の適正化が進展しました。


まとめ

T学区の防犯まちづくりのプロセスは、図2のようにまとめられます。PDCAサイクルに照らせば、T学区の展開は単線的な「P→D→C→A」というプロセスではなく、V1→D1(D2+D3)→C1→(A1+A2+A3+A4)というプロセスを踏みました。つまり、包括されたビジョン(V1)のもとで基幹活動(D1)に加えて相補的な活動(D2、D3)を創発し、地域資源を統合的に診断する場(C1)を設定することで、新しい担い手と共に活動を構想する4つのテーマ(A1〜A4)の創出に至ったのです。


このようにサイクルを作動させるには、次のプロセスに至る動機付けの正否が重要なカギとなります。中間支援組織に求められるのは、ある段階で活動が停滞しそうなときに、先導するのではなく、相補的活動を導入しながら次のサイクルへの動機付けを丁寧に行うことだと言えます。

ヒントとガイド

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