地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方(その2)   

NPO法人岡崎まち育てセンター・りたが、岡崎市T学区をモデル地区として、地域の防犯まちづくりに地域密着型の中間支援組織(支援者)として関わり、防犯まちづくりを進めてきた経緯について6ページにわたり紹介します。その2ではT学区で行われた防犯まちづくり初動期のプロセスを把握し中間支援組織としてのNPO法人岡崎まち育てセンター(以下、NPO法人りた)の支援について、その意味や効果を考察します。


出典:三矢勝司・天野裕・吉村輝彦「地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方 その2:初動期プロセスとその支援の実態」日本建築学会学術講演梗概集. F-1,  2010, pp999-1000

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研究の方法

2005 年に活動を始めたT学区の自主防犯組織は、2009年6月から組織再編を進めるため、2ヶ月に1度の準備会を開きました。NPO法人りたは組織再編会議の 事前企画、当日の運営、会議結果のまとめや活動への反映について支援を行い、これら一連の支援活動を分析しました。

また、事前調査として、岡崎市内の先進地区であるN地区、H地区と今回のモデル地区であるT地区の活動主体に対してヒアリングを行いました。

対象期間は2008年10月から2010年3月までです。


事前調査による自主防犯活動組織の構成の把握

  1. 岡崎市内の自主防犯活動の組織構成

岡崎市内の自主防犯組織のモデルとなっているN学区、H学区では、組織構成の共通項として「総代会(地元町内会)」を頂点とした「PTA(家庭)」「小学校」の三者協働が見いだせました(下図1)。

従前のT地区の自主防犯組織もこのモデルに当てはまる構成をしていました。


  1. T地区の組織運営の課題

ヒアリングの結果、T学区では「活動に対する町内間の温度差とそれに伴う一部活動者への負担集中」「活動実態と成果が把握できないことに起因するモチベーションの低下」などが課題として認識されていることがわかりました。

また、T学区を構成している9町のうち、3町は単年で総代(町会長)が変わります。そのため、N学区、H学区と比べて毎年総代会構成員の1/3が入れ替わるT学区は、防犯活動を含む町内会活動の維持が困難な状況にあり、従前とは異なる特殊解として新たな組織構成を模索する必要があることが分かりました。

 

基盤づくり支援

  1. T学区の新組織体制

T学区が組織再編後に目指す形として、自主防犯組織を総代会からT学区の福祉委員会に移管し、そのリーダーを地域役員の充て職ではなく、専任の新隊長をおく組織構成としました(下図2・地区選定時期)。そして、T小学校児童の見守り活動の再編を第一段階の課題として設定しました。

新体制のコアメンバーは、前任者A氏から委任された防犯組織副隊長B氏(福祉委員会副委員長兼務)、福祉委員長のC氏(総代兼務)、新隊長のD氏(前社会教育委員会会長、福祉委員会長兼務)といった、地縁組織の役員を歴任した3名により構成となりました。


  1. NPO法人りたの支援の内容

NPO法人りたは、基盤づくりの支援として、コアメンバー3名とともに6回の準備会を行いました。最初の2回はコアメンバー3名とNPO法人りたによる会合です(下図2:基盤づくり時期)。

会合の目的 NPO法人りたの支援
準備会① 防犯まちづくりビジョンの共有促進(犯罪ゼロよりも地域コミュニティの再生を目的に掲げる) N学区、H学区の先進的取り組みに対する情報提供
準備会② 防犯まちづくり組織の構成員の検討、設立スケジュール・方法等の検討 多種多様な地縁組織の活動実態や相関関係の把握と情報の整理


上記、2回の準備会の結果、新規構成員としてPTA会長・副会長、小学校教頭、老人会会長、子ども会会長に呼びかけを行うことが確認されました。そして、2009年の【準備会③】の開催に至りました。


活動づくり支援

新組織体制による活動を進めるため、NPO法人りたの支援のもと4回の準備会が行われました(下図2:活動づくり時期)。


会合の目的 NPO法人りたの支援
準備会③ 呼びかけにより集まったPTA会長・副会長、教頭、老人会会長、子ども会会長に活動の趣旨を理解してもらい、防犯まちづくりのビジョンについて共有する。

注)会のコアメンバーとNPO法人りたは、他の参加者の声を聞くことを重要視することに努めたことに留意されたい。

参加者には関わり方に対する温度差がみられたが、第三者的に議論を支援し、多様な思いを持った参加主体がいることをお互いに尊重しながら「まずはやってみよう」という活動の流れづくりを補助した。
準備会④ メンバーそれぞれの既存活動を確認し、地図におとして可視化する。 ファシリテーション技術を用い、大判地図をつかった情報のライブ共有(学区の地図を広げ、地区内で行われている防犯まちづくり活動とその担い手を地図に示し、子どもの登下校見守り活動の実態と課題を可視化すること)を行った。
準備会⑤ 活動の規約と役割分担を確認する 旧体制から新体制へ活動を引き継の支援(関係者相互の感情的衝突を含めて、過去の防犯まちづくり活動の歴史や積み重ねの意図を解釈しつつ、第三者の立場から意向の調整を図る)
準備会⑥ 隊員募集方法の確認 防犯まちづくりのビジョンの共有を支援「防犯のための防犯活動を超えて、防犯を通じたまちづくり活動の可能性の分かち合い」



まとめ:地域密着型中間支援組織が関与する意味と効果

NPO法人りたのT学区への支援の実際から、中間支援組織が防犯まちづくりの組織立ち上げに関与する意味と効果について、以下のようにまとめられました。

  1. 自主防犯活動を行う際に参考にすべき先進事例や蓄積された専門知を、それぞれの地域の実情や活動主体の意向に合致させるには、地域の社会関係の把握・分析、提供する情報の選択・咀嚼が必要であり、中間支援組織が担うべき領域が多い。
  1. 地区特有の社会力学を第三者的に分析し、現場支援に役立てることが出来る。
  2. 地域活動の担い手のモチベーションマネジメントを含めた支援が行いやすい。
  3. まちづくりファシリテーション技術によって新しい参加者が参加しやすい情報整理が促される。


その3:見守り活動組織発足後のまちづくりへの広がりにつづく

ヒントとガイド

  • はじめに
  • 子どもの成長と安全
  • 地域の問題をつかむ
  • 組織づくり・運営
  • 計画づくり
  • 防犯からまちづくりへ
  • 活動をふくらませる
  • 担い手をつなげる
  • 情報の共有
  • 取組みの評価と改善

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