防犯性に着目した提供公園の空間特性と利用者数の関係分析   

内閣府による調査(2004年、2006年)によると、子どもが犯罪に遭う不安を感じる保護者が多いことが分かります。そして、専門家の間でも子どもの遊び場として重要な公園について、その役割や特性を踏まえた的確な防犯対策の必要性が指摘されています。


ところで、一定規模以上のマンション開発の際に公園を整備することを義務づけている自治体は多いものです。これを提供公園と呼びます。提供公園は街区公園と同様に子どもの身近な遊び場として機能するため、防犯性を高めることが必要です。

しかし、提供公園は一般的な街区公園に比べ、マンション住棟の環境を重視するあまり、自然監視性の低い北側に配置されやすかったり、形が極端な長方形であったりと、防犯上好ましくないものが少なくありません。

マンションの敷地内という制約の中、提供公園の防犯性を高めるにはどうしたら良いのか?この知見を得ることが本論文の目的です。


出典:重根美香・山本俊哉(2012):防犯性に着目した提供公園の空間特性と利用者数の関係分析:地域マネジメント学会論文集pp91-96

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研究の方法

調査対象地の概要

調査対象地は千葉県市川市の鬼高地区です。当地区はJR総武線から徒歩圏内のため、工場転出に伴い大規模マンション開発が進みました。域内には約1km四方に14カ所の提供公園があります。提供公園の面積は112㎡〜920㎡と幅広く、形状も多様 です。また公園の形状や施設、住棟との立地関係など空間特性も多様であり、利用者数と提供公園の空間特性との関係を多角的に分析できるため対象地として選定しました。

なお、当域内で地方公共団体が設置したのは、街区公園1カ所のみで、他はすべて提供公園です。


利用状況の把握

利用状況は4日間の観察調査を行いました。調査項目は下記の通りです。

  • 単位時間当たりの利用者数
  • 利用者の属性
  • 利用行動
  • 接道道路の交通量(自転車・歩行者)


空間特性の把握

空間特性は、公園の防犯性や利便性に関する既往研究を参考に、下記の4つの視点を取り上げてそれぞれ現地にて評価しました。

監視性
  • 接道部の人通り、自転車通り
  • 公園に対する住棟配置
  • 接道部以外の見通し
  • 公園接道数 接道部からの可視領域率
  • 公園敷地の円形度
  • 接道部総延長
施設
  • 遊具の種類数
  • 面積 n複合遊具の有無
  • 広場の有無
  • 砂場の有無
  • ベンチの有無
  • 公園敷地の円形度
管理
  • 遊具・施設の管理
  • 公園全体のゴミの清掃管理
  • 公園全体の雑草・落ち葉の清掃管理
アクセス性
  • 公園入り口数
  • 接道部の人通り、自転車通り
  • 公園に対する住棟配置


提供公園の利用の実態

図2、図3は、それぞれの提供公園の利用者数と利用行動を示しています。利用者数が多い順に①〜⑭の番号を付けました。

グラフから、提供公園は子どもの利用が多い公園、高齢者の利用割合が多い公園、遊具遊びの割合が多い公園、散歩やその他の遊びの割合が多い公園など、公園によって利用実態が様々であることが分かります。

提供公園の空間特性の評価は表1の通りです。

それでは、利用実態と空間特性との関係を詳しく見ていきます。

利用者が多い提供公園の特徴

利用者が100人を越えた①〜③の空間特性は、他の公園と比べて【監視性】【管理】【アクセス性】が優れていました。また、①、②は【施設】も優れていました。③は面積が狭く、遊具数が少ない点で【施設】の評価が劣っていましたが、①と生活道路を挟んで隣接しているため、利用者数が多くなったと思われます。

一方、①と車通りが多い道路を挟んで隣接している⑩は利用者数が少なくなっています。⑩は【監視性】と【施設】の評価が低くなっており、利用者数が少ないと思われます。

 

高齢者の利用割合が多い提供公園の特徴

高齢者の利用割合が多い④・⑥・⑧・⑫は、公園の開設年が1980年代と比較的古いことが共通しています。

このことから、提供元マンションの居住者の高齢化に伴い、高齢者の利用率が多くなっている可能性があります。

利用率が低い⑫(n=19)に比べ、利用率が高い④(n=83)は監視性が高くなっています(接道部の可視領域率高、見通し良、円形度良)。⑥(n=42) ⑧(n=35)も⑫よりも監視性が高い傾向にあります。

この点から、高齢者の利用には【監視性】の高さが影響していると思われます。


児童生徒の利用割合が多い提供公園の特徴

児童生徒の利用割合が多い公園は、①・②・⑦・⑬です。これらの公園の特徴は、「遊具数が多い」・「複合遊具がある」・「広場がある」ことであり、子どもは【施設】を重視して公園を選択していると思われます。

また、監視性が非常に悪い⑦の公園は児童生徒の利用割合がほとんどを占めます。子どもは【監視性】を考慮せずに公園を選択していると思われます。

監視性の悪い⑦は複合遊具を利用して携帯型ゲームやおしゃべりを楽しむ姿が観察されました。監視性の悪さが「囲まれ感」となり、室内型の遊びを誘発している可能性もあります。

 

幅広い年齢層に利用される提供公園の特徴

⑤は、幅広い年齢層に利用される提供公園でした。公園の開設年が1974年と古く、遊具遊びだけでなく休憩の利用行動も多くみられます。

このような公園は一定程度の大人の利用があることで、自然な見守りの目(自然監視性)が生まれ、防犯上好ましいものです。

利用者数が多い①〜③と比べると、【監視性】が劣る傾向にありました。監視性を高めることで、よりよい公園になると思われます。



総合考察

今回の分析から、公園の面積は利用者数と関連していないことが分かりました。

また、子どもは施設を重視し、監視性は重視していない傾向が見られました。

一方で、特に高齢者は監視性を重視して公園を利用している傾向が見られました。

したがって、提供公園の子どもの安全を確保するためには、何よりも監視性を高める空間整備をすることが必要です。監視性を高めることで高齢者の利用を促し、自然な見守りの目を増やすことができるからです。

そもそも、提供公園は提供元公園の居住者の高齢化に伴い、利用者も高齢者が増加することが容易に予測できます。しかし、監視性が悪い提供公園では高齢者の利用が少なくなり、関心が薄れた公園は管理もおざなりになり、ますます利用者が減るという負の循環に陥いり、今回調査した⑭の公園のように、利用者数が極めて少なくなる可能性があります。

提供公園は面積や配置がおざなりになりやすいため、監視性には十分留意する必要があると思われます。

ヒントとガイド

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