地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方(その6)   

NPO法人岡崎まち育てセンター・ りたが、岡崎市T学区をモデル地区として、地域の防犯まちづくりに地域密着型の中間支援組織(支援者)として関わり、防犯まちづくりを進めてきた経緯について6ページにわたり紹介します。その6では、2009年度からこれまでの取り組みを俯瞰し、防犯まちづくりプロセスの全体を整理するとともに、地域密着型中間支援組織による支援の形態を整理します。そして、地域活動団体が進める防犯まちづくりにおいて、地域密着型中間支援組織による支援のあり方について考察します。

本論で述べる地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方は、国内の多様な中間支援組織(NPO、支援センター、公民館、社会福祉協議会等)によって活用しうる知見です。各地域の中間支援の担い手が、それぞれの専門性やネットワークを加味しながら、ここでの知見を活用、展開することが期待されます。


出典:吉村輝彦・三矢勝司「地域密着型中間支援組織による防犯まちづくり支援のあり方 その6:防犯活動からまちづくり移行期における支援方法」日本建築学会学術講演梗概集. F-1,  2012


T学区における防犯まちづくりプロセス

岡崎市T学区における防犯まちづくりに関わる取り組みは、2009年度に既存の活動団体の再編から始まりました。下図1は防犯まちづくりのプロセスの全体を整理したものです。プロセスを俯瞰すると、防犯まちづくり組織が変化してきたと同時に、活動も変化してきたことが分かります。

この取り組みのプロセスは、以下の3つの転換期に分けて捉えることができます。


①組織化を中心とした初動期

初動期では、NPO法人りたが地域に関わりながら、組織再編のための下準備が行われました。NPO法人りたは、地域の社会関係の実情を把握し、準備会を組織しました。一方で、ビジョンを共有し、具体的な活動を構想してきました。


②防犯活動から防犯まちづくりを射程に入れてきた展開期

展開期では、「このまちに住んで本当によかった」と思えるまちづくりを実現していくという、共有された包括的ビジョンのもとで、2010年7月に「Tっ子あん&あんクラブ(以下、あんあんクラブ)」が正式に発足しました。その後、ビジョンから派生する複数の活動が行われました。中でも、NPO法人りたによって野鳥の森関連プロジェクトが相補的に併置されたことにより、防犯活動から防犯まちづくりへと活動に広がりがみられるようになってきました。


③組織が他との関わりを持った深化・波及期

深化・波及期では、多様な組織を巻き込んで生まれた防犯まちづくり団体の特性を活かした取り組みとなりました。例えば「あんあんクラブ実行委員会(2011年2月)や「住みよいまちづくり会議(2011年9月)」が開催されました。特に、住み良いまちづくり会議では、学区福祉委員会を中心に、多くの地縁組織が参加しました。そこでは4つのテーマが共有され、防犯活動及びコミュニティづくり活動については、町内会が主体的に活動を始めました。


地域密着型支援組織による支援の変遷

2009年〜2011年に渡って、地域密着型支援組織(NPO法人りた)が、岡崎市T学区の防犯まちづくり組織(あんあんクラブ)に対して行った支援活動を俯瞰的に総括すると、次のように整理できます。


2009年の活動

①.調査分析支援:先進事例地区やT学区の防犯まちづくり関係者(岡崎市や警察を含む)へのヒアリング


②.まちづくり活動支援:新しい防犯まちづくり組織(あんあんクラブ)づくりの支援

組織づくり支援では、あんあんクラブ役員に対して「何をするか」にとどまらず「何のためにするか」を問いかけながら、活動づくり、組織づくりを進めた点が特徴となっています。

これは、従来の防犯活動が「何をするか(アウトプット)」を中心に活動や組織を作るのに対し、防犯活動を「何のためにするか(アウトカム)」を活動の担い手である地域住民に意識化させる効果がありました。こうした問題意識を持ちながら、あんあんクラブの担い手となる関係者(学区福祉委員会、子ども会、老人会、小学校、PTA)が集まり、「協議する場」(あんあんクラブ準備会)が開催されたことで、「子どもが遊ばなくなった野鳥の森問題」という課題意識が共有されました。


2010年の活動

①相補的活動:「野鳥の森問題」に対する支援活動

「野鳥の森問題」に対して、あんあんクラブの組織的合意としては「当面、見守り活動の立ち上げ、自立に注力するため、野鳥の森問題には着手しない」となっていました。

そこで、NPO法人りたは、自分たちができるT学区の防犯まちづくり活動支援として相補的活動(T小学校の総合学習と連携した野鳥の森学習、H高校と連携した野鳥の森改善提案)を進めました。


②調査分析支援:野鳥の森調査、地域資源の分析

野鳥の森調査として、ホームレス問題・公園管理を所管する行政からの情報収集を行いました。また、地域資源の分析として、①の相補的活動から得られた活動の可能性とあんあんクラブが持つ組織的可能性などの分析を行いました。これらの調査分析支援の成果を、あんあんクラブ実行委員会という「協議する場」に持ち込むことで、翌年の町内会活動や野鳥の森問題解決への動機づけを行うことに成功しました。

その後、町内会とあんあんクラブ関係者らの尽力により、野鳥の森問題の大きな要因であったホームレスに見える男性が滞在する問題は、2011年の冬に解決しました。地域住民自らの力で野鳥の森問題を解決したことで「2012年の春頃に野鳥の森の清掃活動から始めよう」という機運が立ち上がっています。


2011年の活動

①調査分析支援:活動者向けアンケートの実施

あんあんクラブの見守り活動について「活動実態が見えない」という課題を克服するべく、活動者に対してアンケートを行いました。結果は学校と町内会の2つのルートで周知され、見守り活動の維持と充実に貢献しました。


以上、NPO法人りたによる一連の活動事例から、防犯活動からまちづくりへの広がり(地域の主体性)を生み出す上で重要だったのは、下記の3点であることが確認できました。

  1. アウトカムを投げかけながら活動や組織づくりを進める
  2. 防犯まちづくりの相補的活動を担う
  3. 活動の評価を支援する

図2にあるように、NPO法人りたによる中間支援活動である調査分析支援、まちづくり活動支援、防犯活動支援の重点度やその内容が変化し、徐々にT学区の防犯まちづくり活動が自立発展へと向かっています。


ヒントとガイド

  • はじめに
  • 子どもの成長と安全
  • 地域の問題をつかむ
  • 組織づくり・運営
  • 計画づくり
  • 防犯からまちづくりへ
  • 活動をふくらませる
  • 担い手をつなげる
  • 情報の共有
  • 取組みの評価と改善

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