安全マップと点検簿を使って自転車の道路環境を改善

金沢市の中心市街地の取り組み

 金沢市の自転車事故死傷者数は、2003年から2013年の10年間で55%も減少しました。市民団体「地球の友・金沢」が2001年に高校生らの協力を得て作成した「金沢自転車マップ」が起点となったPDCAサイクルの交通安全対策が実を結んだといえます。現地を訪問し、「地球の友・金沢」の三国成子さんと三国千秋・北陸大学教授にその経緯について伺いました。

 金沢市の中心市街地には、城下町の歴史を伝える細く入り組んだ旧道が多く残っています。通勤ラッシュ時には、通過車両がその道を抜け道として使用していました。それを避けた自転車は狭い歩道を無秩序に走行していたため、歩行者と車両および自転車の交通事故の対策が大きな課題になっていました。

 「地球の友・金沢」は、その名のとおり、地域環境グループとして1990年に設立し、熱帯雨林を守る活動に取組んでいました。環境政策を学ぶためにドイツを訪問した際、地球環境に優しい自転車利用を促進するには通行の安全性向上が重要であることに気がつきました。そこで、環境首都として知られるドイツのフライブルグ市の取り組みを参考にして、「金沢自転車マップ」の作成から始めることにしました。
 作成にあたっては、市内の各高校を訪問して、自転車通学をしている高校生に一枚ずつ白地図を渡し、安全な道、快適な道、危険な道などを色分けするとともに、その理由を記述するよう依頼しました。そして、回答を得た約1,500人分のデータを金沢市全域のマップ(全紙:102×73㎝)に1年がかりで転記しました。それを印刷して高校生らに配りました。
 このマップが国土交通省の金沢河川国道事務所の目に止まり、評価されました。そして、2002年からは同事務所と協働し、歩行者の安全性の視点も加えた安全マップを中学校区単位で毎年一校区ずつ作成することになりました。小中学校のPTA・育友会とも協働し、小中学生たちが現地調査を行い、その調査結果を白地図上にとりまとめ、安全な道、快適な道、危険な道などを色分けし、気がついた点を付記しました。4年間で4中学校区の安全マップが作成されました。協力者数は4,000人で、印刷配布した部数は8,000部を超えています。

子ども達に配られた白地図への記入方法

全紙に手書きで記入

作成された「自転車・歩行者交通安全マップ」安全な道(緑)、快適な道(紫)、危険な道(赤)などに色分け。またアイコンで交通量が多い、道がデコボコしているなど地道な現地調査の結果を詳細に表示している

 子どもたち自身が「自転車・歩行者交通安全マップ」を作成することは安全教育上効果的ですが、金沢市では安全マップ作成だけにとどまらず、それをもとに環境改善に取組んだ点が評価できます。
 危険箇所などの改善にあたっては、安全マップの作成に関わった小中学校のPTA・育友会と「地球の友・金沢」と石川県警察本部と道路管理者(国・県・市)の4者が集まって意見交換を行い、3年以内を目標に危険箇所の改善をしていくことにしました。そのツールとして、『道の点検簿』と題した改善状況の確認簿を作成しました。これは、道路管理者と公安委員会が危険箇所毎に回答した「3年以内の改善案」と「現在の改善状況」をまとめたもので、金沢河川国道事務所のホームページにおいて、改善状況を確認できます。

『道の点検簿』ホームページのトップページ

『道の点検簿』で公開されている改善事例

 取材当日は、金沢レンタサイクル「まちのり」を利用して市内を走行しました。信号確認やバス停注意などの文字が路面上に表示され、初めての道も安心して走行できました。
 金沢市は、自転車利用者のルール遵守・マナー向上を啓発するため、2011年度から「自転車ルール・マナーに関する検定」を実施しています。さらに、2014年4月には、自転車の安全な利用の促進に関する条例の施行に伴い、自転車の安全走行のポイントをまとめた「自転車ルール&マナー読本」を作成して、市を挙げて自転車の交通安全教育をすすめています。

(文責:森脇環帆)

細く入り組んだ旧道でも、自転車はキープレフトの表示。
自転車のピクトグラムがかご付きなのは金沢ならでは)

自転車レンタル・シェアリング「まちのり」を利用して金沢市内を走行

主要観光地毎に自転車ポートがあり、効率的に観光もできる

参考資料

1)三国千秋・三国成子・森井博「徹底した調査と利用者目線を重視『金沢モデル』が自転車の未来をひらく」自転車・バイク・自動車駐車場 パーキングプレイス 2014 年3月号

2)金沢自転車ネットワーク協議会「金沢自転車通行空間整備ガイドライン(案)」2015年3月

3)国土交通省金沢河川国道事務所『道の点検簿』ホームページ

4)石川俊之・畠中拡治・宮下千春「道の点検簿〜「自転車・歩行者安全マップ」のPDCAサイクル〜」国土技術研究会、2006年10月

ヒントとガイド

  • はじめに
  • 子どもの成長と安全
  • 地域の問題をつかむ
  • 組織づくり・運営
  • 計画づくり
  • 防犯からまちづくりへ
  • 活動をふくらませる
  • 担い手をつなげる
  • 情報の共有
  • 取組みの評価と改善

参考にしたい

  • モデル地区
  • 先進事例

あなたはご存知? 知識編

データから知る 資料編