モデル地区

太子堂地区の取り組み

防災まちづくりの先進地におけるパトロール活動

 東京都世田谷区の太子堂地区は、密集市街地とよばれる場所です。大規模な震災が起きると、火災による大きな被害が懸念されるため、1980年代から防災まちづくりが進められたまちづくりの先進地区です。関東大震災後の市街化によってできたまちで、古くから防災意識は高く、地域を構成する自治組織(町会)や小中学校PTAの活発な活動が、パトロールをはじめとする防犯・防災などの地域の安全を守る活動を支えています。
 今回、私たちが地域の様々な防犯活動をヒアリング調査し、その結果を各団体が共有することで、色々な良い点や課題が分かってきました。現在は、調査をきっかけに横断的な検討組織をつくり、自らの手で新しい「防犯まちづくりマップ」に取り組んでいます。

※太子堂地区は、東急田園都市線で渋谷駅から西へ二つ目の三軒茶屋駅を中心に広がる住宅地域です。7つの町会によって「太子堂連合町会」を構成しています。

木が茂る過ぎる問題も指摘されている烏山川緑道

地区内には狭い道路が多い

(1)取り組みの背景

 東京都世田谷区にある太子堂地区は、都心に近い住宅密集地域です。まちの形成には、関東大震災後に下町方面からの移住者も多かったといわれており、下町の気風も残る住民どおしの気さくなつきあいを基盤に活発な地域活動が行われてきました。町会やPTA等の横断的取り組みのもと、子どもを対象にしたイベント(マラソン大会、ボーリング大会、餅つき大会等)や、小学校での「サバイバルキャンプ」などが古くから行われてきました。
 地区内では、町会組織とは別にまちづくり協議会が2箇所で立ち上げられ、世田谷区と一緒にハード面での防災まちづくりを主要テーマとしたまちづくり計画を策定するなど、住民参加によるまちづくりの先進事例としても知られています。
 防災まちづくりのソフト面(防火対策、発災時の緊急対策、避難所運営など)や防犯まちづくりは、主に7つの町会が担っており、それぞれの町会が、区域の特徴を踏まえて独自の活動を行っています。また、地区内の小中学校では、PTAが中心となって、防犯パトロールや防犯マップづくりを行っています。

(2)主な取り組み

 それぞれの町会やPTAの活動の中から、防犯パトロールを中心に他地区でも参考になりそうな工夫やこだわりを整理します。

⇒各町会の活動概要は「活動のまとめ」参照

①参加者の幅を広げる

■子どもパトロールは親も一緒に

 歩き始めの小さい子どもから参加できるパトロールを毎月1回夜に実施している町会があります。子どもの目をまちづくりに生かせる効果ととともに、若い親の参加が期待できます。若い世代の参加は地域活動の活性化が期待できますが、ただ、親が参加してくれたからと行って、無理に町会活動に引き込まず、長い目で見ることも大切です。

■参加できる人が参加するローテーションで、個々の負担を軽く

 年度はじめにパトロール参加者をつのり、「何月は誰と誰」という風にあらかじめローテーションをはっきりさせておくと、個々の負担も軽く参加しやすくなります。
 また、参加者募集の際には、パトロールの参加申し込み書を回覧するだけではダメ。顔を合わせて声をかけると参加してくれます。

■気楽に参加しやすい雰囲気に

 町会役員でないと参加できない、参加したら役員にさせられてしまいそう…、という雰囲気はダメ。町会役員の固定化・高齢化は課題になってはいても、まずは若い層も気楽に参加できる自由な雰囲気づくりが大切です。

■面倒でも反省会を

 パトロール後の情報交換は大切。ペットボトルのお茶を飲みながら簡単なミーティングでも良いので、パトロールの結果を共有しておくことで、改善点など次につなげることができます。

■参加しやすい時間帯と効果的な時間帯の兼ね合いを

 防火・防犯を目的とした夜回りは女性が参加しにくいと言われていました。そこで、日暮れ時に犯行が多いひったくり防止を目的としたパトロールを企画、女性が参加しやすいよう夕食の支度が始まるギリギリ前に行うことにしました。無理をせず、効果と参加しやすさのバランスをとることも大切です。

②パトロールは広い視点で

■パトロールは防犯も防災も交通安全も兼ねて

 天候や乾燥状況にあわせて「戸締まり注意」「火の用心」など声かけの種類を変える。また、無灯火運転等にもマイクで声かけすることで違反者が減った実績があります。

■弱者の支援への視点も

 非常時に備えて、保育園の支援を検討するため園に話を聞きに行くなど、幼児施設や高齢者施設との連携を深めることも大切です。施設担当者から、弱者の視点にたった危機管理などの有用な情報を得られます。

■防犯プレートは交通安全にも効果が

 近年良く見かけるようになりましたが、自転車カゴに防犯プレートを付けていると、乗っている本人の自転車のマナーも良くなり、交通安全にもつながります。

③中学生の担い手としての可能性

 地区内の太子堂中学校では、中学校として地域との連携を重視していることもあり、生徒の地域活動への参加が進んでいます。これまでの活動をふまえて、まちづくりの担い手としての中学生の可能性について、こんな指摘がされています。

■地域のまちづくりへの多様な参加のきっかけに

 中学生がボランティアとして地域活動に参加することで、地域の大人と中学生が顔見知りの関係になってきました。また、小中学校の先生も地域活動に顔を出してくれることで、学校、生徒、地域との関係がより親密になり、地域のまちづくりの基盤になります。

【中学生の意見】

 地域に見守られていると窮屈か?という質問に対する中学生の回答は「自分がやましいことをしていれば窮屈だろうが、何もしていなければ大人の支援があると安心」。中学生も地域の大人に見守られることで安心して暮らせることになります。

【地域からの意見】

 町会としても地域のイベントを通して中学生と様々な活動をしているので、中学生もある程度は町会役員などの顔を知っています。彼らがたむろしているところに注意しに行ったとき「やべえ」と言って逃げたりすることもあるそうです。それだけ彼らも地域を意識しており、続けることによって何らかの効果があると思っています。

(3)現在の成果と今後の取り組み

 太子堂地区にある各町会やPTAの防犯活動の取り組みを調査を進めていくなかで、各団体同士がどのような取り組みをしているか情報が共有されていないことがわかりました。各団体からもそうした機会がほしいという声も聞かれたため、調査結果の報告会を開催し、各団体の活動内容や課題を報告しあいながら、お互いの活動を理解し自らの活動を検証する機会をつくりました。
 その結果、各町会の独自の工夫や共通の課題についての認識が得られ、これまで防災に力を入れていた町会でも、防犯に対する意識を高めたいといった声があが流等の成果があがりました。
 現在は、区の補助金も得て、地域全体として実際に使える防犯まちづくりマップを作成することになり、新たな検討組織をつくり話し合っているところです。

ヒントとガイド

  • はじめに
  • 子どもの成長と安全
  • 地域の問題をつかむ
  • 組織づくり・運営
  • 計画づくり
  • 防犯からまちづくりへ
  • 活動をふくらませる
  • 担い手をつなげる
  • 情報の共有
  • 取組みの評価と改善

参考にしたい

  • モデル地区
  • 先進事例

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